県立神奈川近代文学館

横浜・港の見える丘公園の中にある、県立神奈川近代文学館の公式noteアカウントです。

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  • 機関紙「神奈川近代文学館」

    年に4回発行している機関紙「神奈川近代文学館」の掲載記事や、作家・文学者によるエッセイを期間限定でお読みいただけます。

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    神奈川近代文学館の講演会・イベントの動画配信記事です。

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機関紙167号(抜粋)発行=1月15日

機関紙「神奈川近代文学館」167号から当館の情報を抜粋してお送りします。詳しくはホームページをご覧いただくか、当館までお気軽にお問い合わせください。 ★機関紙は1部100円、ミュージアムショップ・郵送で販売しています。 〈機関紙167号寄稿など〉 【新春随想】 芝浜など-荻野アンナ 【寄稿・中野孝次生誕100年】 中野さんが書きたかったこと-高橋一清 【寄稿・木下利玄没後100年】 木下利玄資料が物語る「白樺」派の青春-服部徹也 【追悼・山田宗睦】 山田宗睦さんの笑顔-蜂飼

    • 芝浜など/荻野アンナ

      ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 荻野アンナ・作家、理事長  年改まって、思い返すと印象深いのは、十月十九日に開催した「笑門来福落語会」だ。金原亭から馬生師匠、馬治師匠、古今亭から菊春師匠が参加してくれた。  トリの馬生師匠は「芝浜」をじっくりと聴かせた。酒で失敗した魚屋が、早朝の芝の浜で五十両入った財布を拾う。早速飲めや歌えの大宴会で、グーと寝て起きてみると、女房

      • 中野さんが書きたかったこと/高橋一清

        ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 高橋一清・編集者、松江市文化協会「湖都松江」編集長  中野孝次さんの担当編集者になったのは、昭和五十六(一九八一)年であった。この年、中野さんは大学教師を辞め、文筆生活に入られた。  編集者として、役に立ちたいと考え、中野さんに三つの約束をした。一つは、これからの小説執筆にあたり、先輩作家たちと創作の方法について対談を行ってほしい。二

        • 木下利玄資料が物語る「白樺」派の青春/服部徹也

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 服部徹也・東洋大学文学部准教授  明治三十八年〔一九〇五年〕九月五日。日露戦争勝利の喜びは、講和条約への怒りとなって帝都を覆っていた。人々は軍人を英雄に祭り上げたが、その振り上げた拳の行き場を探した。当局はこの日計画されていた日比谷公園における政治集会を阻止すべく封鎖を行なったが、正午には数万人の群衆が公園になだれ込んだ。  同じ日

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        記事

          山田宗睦さんの笑顔/蜂飼耳

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 蜂飼耳・詩人、作家、評議員    二〇二三年の師走に開かれた神奈川近代文学館の懇親会に、山田宗睦さんは参加されていた。笑顔で「あと二ヶ月で白寿なんですよ」と言われた。「百から一つ足りないというので白なんですね」と、白寿という言葉の意味を付け加えられた。とてもお元気そうで、白に一つ足した百まで、その先までも、軽々と迎えられることと思った

          山田宗睦さんの笑顔/蜂飼耳

          火の言葉だけが残った④ 洗い晒した眼の=小林秀雄/吉増剛造【連載随筆】

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 吉増剛造・詩人  わたくしたちも、わたくしたちの感じかたも、僅かに、朧ろに、少し幽かに、か、傾きつつ、病んでいるのかも知れなかった。読書報告のようで恥かしいことなのだけれども、六十年間もの、座右のキルケゴールを読み返してみたり、聖書のヨブ記に触れたりしているのも、……そうか、これはもう、未知の、未聞の、もしかしたら未来の、人々の心の働

          火の言葉だけが残った④ 洗い晒した眼の=小林秀雄/吉増剛造【連載随筆】

          ベイスターズと出会った駅/吉野万理子

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 吉野万理子・作家、脚本家 よしの・まりこ 1970年生まれ、神奈川県出身。2002年「葬式新聞」で「日本テレビシナリオ登竜門2002」優秀賞、2005年『秋の大三角』で第1回新潮エンターテインメント新人賞を受賞。児童読物も精力的に執筆。近著に『ゆうやけトンボジェット』『階段ランナー』など。  みなとみらい線が開通した直後のことを、ほ

          ベイスターズと出会った駅/吉野万理子

          【所蔵資料紹介51】 種田山頭火 荻原井泉水宛書簡

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」167号(2025年1月15日発行)の「所蔵資料紹介」記事を期間限定で公開しています。〈2025年3月31日まで〉 〈機関紙167号寄稿など〉 【新春随想】 芝浜など-荻野アンナ 【寄稿・中野孝次生誕100年】 中野さんが書きたかったこと-高橋一清 【寄稿・木下利玄没後100年】 木下利玄資料が物語る「白樺」派の青春-服部徹也 【追悼・山田宗睦】 山田宗睦さんの笑顔-蜂飼耳 【連載随筆】 火の言葉だけが残った④ 洗い晒した眼の=小林秀

          【所蔵資料紹介51】 種田山頭火 荻原井泉水宛書簡

          〈講演会動画配信〉尾崎一雄講演「この頃思うこと 文学館は何故必要か」(1980.10.25 於・神奈川県民ホール)

          1980年10月25日に神奈川県民ホールで開催された文学館建設推進文芸講演会での音声です。この講演会では、建設準備懇談会委員の尾崎一雄、井上靖、小田切進、中村光夫、長洲一二(神奈川県知事)が登壇し、文学資料を散逸から守り、県民の文化活動の拠点となる文学館の建設の必要性を訴えました。 尾崎一雄は文学者の立場から、文学館が何故必要か、自らの蔵書をめぐるエピソードをまじえユーモアたっぷりに語り、会場を湧かせています。 尾崎一雄 1899~1983 〈プロフィール〉 おざき・かずお

          〈講演会動画配信〉尾崎一雄講演「この頃思うこと 文学館は何故必要か」(1980.10.25 於・神奈川県民ホール)

          機関紙166号(抜粋)発行=10月1日

          機関紙「神奈川近代文学館」166号から当館の情報を抜粋してお送りします。詳しくはホームページをご覧いただくか、当館までお気軽にお問い合わせください。 ★機関紙は1部100円、ミュージアムショップ・郵送で販売しています。 〈機関紙166号寄稿など〉 【寄稿・安部公房展】 見知らぬ地図、あるいは燃えつきぬ地図―恩田陸 辺境とクレオール―沼野充義 【展覧会場から】 仮説の文学 【寄稿・開館40周年】 来訪のすすめ―宇佐見りん 漱石遺品寄贈の経緯―夏目房之介 畏れの場―藤沢周 【連

          機関紙166号(抜粋)発行=10月1日

          来訪のすすめ/宇佐見りん【寄稿・開館40周年に寄せて】

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」166号(2024年10月1日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年1月14日まで〉 宇佐見りん・作家  かつて私にはいくつもの秘密の場所があった。取材で紹介したり、そもそも日々多くの人がそこへ訪れているわけで厳密に言えば全く秘密ではない。ないのだが、誰かを連れて訪れるときと、単身で訪れるときでは、少し違った魅力があると思う。ひとりのときにだけ対話するためにそっと開いてくれるような、そういう意味での秘密の場所に何度も支

          来訪のすすめ/宇佐見りん【寄稿・開館40周年に寄せて】

          漱石遺品寄贈の経緯/夏目房之介【寄稿・開館40周年】

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」166号(2024年10月1日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年1月14日まで〉 夏目房之介・マンガ・コラムニスト  詳しいことは知らないが、戦前のことで、漱石の遺品は長男・純一(私の父)に相続された。しかし、祖母鏡子も父も危機管理能力はからきしだったので、非常に危なっかしかったのではないかと推測する。実際、時々遺品が持ち出され、売られたりした。父はそれを探し出して買い戻す、ということもあったらしい。  やがて遺

          漱石遺品寄贈の経緯/夏目房之介【寄稿・開館40周年】

          畏れの場/藤沢周【寄稿・開館40周年】

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」166号(2024年10月1日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2025年1月14日まで〉 藤沢周・作家・理事  いかにして集めたのか。稀覯の直筆原稿に、作者が秘蔵していた宝物。こんな人たちと交流していたのかと目から鱗の写真群。愛しき人への手紙。愛用していた喫煙具や衣服があるかと思えば、誰にも見られたくなかったであろう日記までも。  神奈川近代文学館では全国的にも稀有なる規模の文学展が毎回催されるが、その収蔵、収集の技と努

          畏れの場/藤沢周【寄稿・開館40周年】

          火の言葉だけが残った③ 赤い火=志賀直哉/吉増剛造【連載随筆】

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」166号(2024年10月1日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈連載終了まで〉 吉増剛造・詩人  夏休みの思い出の残り香のせいなのだろうか、不図、源実朝の名歌が、心に浮かんだ。  玉くしげ箱根の海はけゝれあれや二山にかけて何かたゆたふ  〝たゆたふ〟は〝ゆらりと動きただよう〟〝けゝれ〟は、東国方言の〝こゝろ〟。何故この一首が、心に浮かんで来たのか、わたくしにも判らない。おそらく、小文の予兆の燭火のようにして浮かんで来たの

          火の言葉だけが残った③ 赤い火=志賀直哉/吉増剛造【連載随筆】

          機関紙165号(抜粋)発行=2024年7月15日

          機関紙「神奈川近代文学館」165号から当館の情報を抜粋してお送りします。詳しくはホームページをご覧いただくか、当館までお気軽にお問い合わせください。 ★機関紙は1部100円、ミュージアムショップ・郵送で販売しています。 〈機関紙165号寄稿など〉 【理事長就任にあたって】 情熱と審美眼-荻野アンナ 【寄稿・古田足日展】 ホタルブクロの咲く野へ―橋本麻里 【展覧会場から】 「手をつなごう」からの出発 【追悼・三木卓】 「ミッドワイフの家」とお相撲―辻原登 【連載随筆】 火の言

          機関紙165号(抜粋)発行=2024年7月15日

          火の言葉だけが残った② 漱石、一本の光/吉増剛造【連載随筆】

          ※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」165号(2024年7月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈連載終了まで〉 吉増剛造・詩人  芥川龍之介が驚いた、漱石の〝稲妻に折れて〟(夏目漱石「永日小品・暖かい夢」新潮文庫『文鳥・夢十夜』九十九頁)について、いますこし……。  〝稲妻に折れて〟には遠くて静かなそうして幽かな物音がする。〝遠くて静かな幽かな……〟と表現に困惑をしてふっと綴ってしまっていたのだが、もしかすると、次に引用をしてみる漱石の、名作というのより

          火の言葉だけが残った② 漱石、一本の光/吉増剛造【連載随筆】